活動ログ

2020年6月20日 10:00

「力はあなたの弱さから生まれる」あるラジオから聞いた言葉です。何とはなしに聞き流していたが、ふと考えついたことがあります。これはフロイトの言葉ですが、そこにはコンプレックスから生ずる「力」がもたらすものと解釈されているようです。そこで私は違った観点から「力はあなたの弱さから生まれる」を考えてみました。

常日頃から「書」を書きはじめる時は勇気がいると思っておりました。そこには、意気込みもありますが、不安も出てきます。当然の事ではありますが、色々なことが脳裏をかすめます。そして弱気もでてきます。然し、その弱さがとても大事であると以前から気がついておりました。人は弱気になった時、初めてその人の力が見られるのではないでしょうか。「書」もその弱さの中から打ち勝つエネルギーが発散され、自己精神の強き力をぶつけなくてはいけません。弱気になってはいい「書」が書けません。あらゆる緊張感からも「力」が出てくるのです。喜怒哀楽も「書」には必要でしょう。そしてもっと次元の高い「書」はその喜怒哀楽をも通り越し、その時の最大限の「力」を醸し出さなければ、本当の「書」に到達し得ないものです。これは日の浅い「書」を学ぶ方にもいえます。きっと真剣に書いている時、そのひとの最大限の「力」が出ている筈です。

書く為の「力」すなわち生きる為の「力」が人間の根源ではないでしょうか。私は「書」を通じて、フロイトの「力はあなたの弱さから生まれる」の言葉が少し理解できたような気が致しました。(泰斗 平成十二年二月号より)