活動ログ

2023年9月14日 10:00

第二十九回泰書展開催にあたり

第二十九回泰書展開催にあたり

世間では、コロナの呪縛から解放された如く、活発な動きが出ております。不安を少なからず感じながら、その中での第二十九回泰書展の開催となりました。主催者の一人として、責任を重く感じております。そして、私自身が内心、ホッした事も事実でした。「これだけ出品して頂いた。誇れる内容、書展」と自画自賛もしました。

「啐啄」(そったく)と言う言葉があります。「機を得て学人と師家との両者の心が投合することにたとえる」禅の言葉でありますが、自惚れた言い方をすれば、出品作を見ますとその様な思いが感じられました。特筆すべき事は、書道展の一つの理想と掲げられている「臨書(中国明清以前の所を学ぶ事を臨書という)」それも全臨(その文の全文を書く事。一部を書くのを節臨という)をされた方が多くいたと言う事です。それに合わせ、楷書が全出品の中で七十八%を占めております。一人一人が「書」に真摯に向かっている証でもあります。ただ、楷書だけが書道ではありません。他の書体にも極致の世界があり、それを成し遂げるのにはかなりの叡智が必要となります。

「教える努力」と「教わる努力」のまさに「啐啄」ではないでしょうか。

「書」は技術・精神性が求められます。ただの手本書き写しは初期の段階ではありますが、最終的には自身の芸風を醸し出さなければなりません。今年は、その第一歩です。泰書會創立時の理念が漸く出来上がった感じでもあります。

冒頭に申し上げましたとおり、この様な状況下に於いて、多くの出品者を始め、会員諸氏、関係各位のご理解を賜ったことに心より感謝申し上げ、開催の御挨拶といたします。

(機関誌 泰斗令和五年九月号 巻頭言より)