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2025年3月1日 10:00

名人の書画 書画の名人

名人の書画 書画の名人

最近、あるオークションを見学させて貰った。会場には千人以上の来場者がいた。演出は当然、ハデな催し物であった。正月に近かったので、その雰囲気そのものの賑やかさであった。今回のオークションは書画のみで、特別な催しとも聞いた。点数は三十点と意外にも少ない出品であった。

このオークションは、売り上げ全額を慈善団体に寄付するとの事である。これは、世界的に見ても、現代の状況を見れば納得もする。世界中に、天災・人災に遭われた方々が大勢おられる。

今回は、書画専門の富裕層の集まりであり、凡そ、三時間で三十点近い作品が瞬く間に落札され、計一億二千万に達した。これには驚いた。確かに、有名な作家、質の良い作品なのかもしれないが、一点が何百万円もする。見ず知らずの作品(私が知らない作家・・・それは無知なのかもしれないが・・・)が高値で平気で落札される。最近、どこかの国のアーティストがバナナをガムテープで貼ってあるだけの作品で一億という値がつき、それを落札した人がいたと聞いた。考えられない。書画の様な、それも歴史背景が確りした作品、骨董であれば解らない訳でもない。現代の芸術作品、アートの世界は狂気の沙汰である。

ある方が書画を学んでおり、その師匠の作品が「一億円もします」と自慢げに話していたのは滑稽にすら感じた。芸術の価値観は完全に崩れてしまった。これは世界的な現象である。

ある友人が、「名人の書画か、書画の名人か」と語ったのが印象的であった。何が本物なのか解らなくなってきた。

(機関誌 泰斗令和七年三月号 巻頭言より)